金庫の開錠を業者に依頼する際、ふと「これって、警察に連絡したり、立ち会ってもらったりする必要があるのかな?」という疑問が頭をよぎることがあるかもしれません。特に、遺品整理で出てきた所有者不明の金庫や、会社の金庫を開ける場合など、その正当性に少しでも不安がある場合に、そう考えるのは自然なことです。結論から言うと、通常の金庫開錠において、警察への連絡や立ち会いは「原則として不要」です。金庫の開錠は、あくまで所有者とその依頼を受けた業者との間の民事上の契約であり、事件性がない限り、警察が介入する事案ではありません。優良な鍵屋であれば、作業前に、運転免許証や登記簿謄本、遺言書といった書類で、依頼者がその金庫の正当な所有者(または権限者)であることを厳格に確認します。この本人確認の手続きが、不正な開錠を防ぐための、業界としての自主的なルールであり、警察の代わりとなる第一の関門となっているのです。しかし、いくつかの例外的なケースでは、警察への連絡や相談が推奨される、あるいは必要となる場合があります。その代表的な例が、「犯罪の疑いがある」場合です。例えば、金庫に不審なこじ開けの跡がある、明らかに誰かが不正に開けようとした形跡がある、といった場合です。これは、窃盗未遂事件の可能性があります。業者を呼ぶ前に、まずは警察に連絡し、現場検証をしてもらう必要があります。勝手に業者を呼んで開錠してしまうと、重要な証拠を破壊してしまうことになりかねません。また、相続した金庫などで、親族間に所有権をめぐる争いがある場合なども、後々のトラブルを避けるために、弁護士などの法律専門家に相談の上、場合によっては関係者や第三者の立ち会いの下で開錠するといった、慎重な対応が求められることもあります。基本的には、所有者が明確で、事件性がなければ、警察を呼ぶ必要はありません。しかし、少しでも状況に不審な点や、法的なトラブルの匂いを感じるのであれば、まずは鍵屋ではなく、警察や弁護士に相談する、という冷静な判断が重要になります。