終電もとうに過ぎた深夜、私は自宅マンションの冷たいドアの前で立ち尽くしていました。飲み会を終え、上機嫌で帰ってきたものの、ポケットを探っても、かばんの中をひっくり返しても、あるべき鍵が見つからないのです。我が家の鍵は、数年前に防犯のために交換したディンプルキー。ピッキングにも強いと聞いていたその頑丈さが、この瞬間に限っては、私を拒絶する冷たい壁にしか思えませんでした。家族は旅行中で、頼れる人もいません。私は凍える手でスマートフォンを取り出し、「鍵開け 深夜 ディンプルキー」と検索しました。いくつかの業者がヒットし、藁にもすがる思いで一件に電話をかけました。事情を話すと、電話口の男性は落ち着いた声で「ディンプルキーですね。深夜料金もかかりますので、総額で二万五千円ほどになりますが、よろしいですか」と告げました。一瞬、金額の高さに言葉を失いましたが、このまま朝まで外にいることを考えれば、選択の余地はありませんでした。依頼から約四十分後、一台のバイクが静かに到着し、作業員の方が現れました。免許証で本人確認を済ませると、彼は小さな工具箱から見たこともないような細長い器具をいくつか取り出し、静かに鍵穴と向き合い始めました。カチャ、カチャ、と金属の触れ合う微かな音だけが、深夜の廊下に響きます。私はただ、息を殺してその手元を見つめるだけでした。永遠のようにも感じられた十数分後、不意に「カチリ」という小さな音がして、作業員の方が「開きましたよ」と静かに言いました。ドアノブを回すと、あっけなく扉が開きました。その瞬間の安堵感は、今でもはっきりと覚えています。提示された料金は二万六千円。決して安い出費ではありませんでしたが、あの絶望的な状況から救い出してくれたプロの技術を目の当たりにし、その金額には十分に納得できました。この夜の出来事は、鍵の管理の重要性と、専門技術の価値を私に痛感させた、忘れられない体験となったのです。
私が深夜にディンプルキーの鍵開けを頼んだ話