会社の事務所や店舗で毎日使っている業務用金庫。ある日突然、それが開かなくなってしまったら、業務に与える影響は計り知れません。中には、釣銭や売上金、重要な契約書や印鑑など、その日の業務遂行に不可欠なものが入っているからです。こうした事態に陥った時、担当者はパニックになりがちですが、会社組織として、冷静かつ適切な対応を取る必要があります。まず、担当者が個人の判断で、勝手にインターネットで探した鍵屋を呼ぶのは、原則としてNGです。会社の備品に関するトラブルは、必ず定められた報告ルートを通じて、会社としての正式な判断を仰ぐ必要があります。最初にすべきことは、直属の上司に状況を正確に報告し、指示を受けることです。その上で、会社の設備管理を担当している総務部や経理部、あるいは店舗であれば本部などに連絡を取ります。会社によっては、特定の鍵業者と保守契約を結んでいたり、懇意にしている業者がいたりする場合があります。その場合、業者への連絡や手配は、全て担当部署が行います。勝手に業者を呼んでしまうと、二重手配になったり、後々の経費精算でトラブルになったりする可能性があります。また、セキュリティの観点からも、会社が認めていない外部の人間を、安易にオフィスや店舗に招き入れるべきではありません。依頼する業者が決まったら、次に重要になるのが「費用の取り扱い」です。金庫の開錠費用は、数万円単位の高額になることがほとんどです。作業後に、個人のクレジットカードで立て替える、といったことは避け、必ず「法人としての支払い」が可能かどうかを、事前に業者に確認しましょう。請求書による後日の銀行振込に対応してくれる業者がほとんどですが、中には現金払いしか受け付けない業者もいるため、事前の確認は不可欠です。そして、作業当日には、必ず会社の責任者が立ち会い、作業前の本人確認(会社の登記簿謄本や、担当者の社員証・名刺など)と、最終見積もりの確認を行います。業務用金庫のトラブルは、個人の問題ではなく、会社の経営に関わる問題です。組織の一員として、ルールと手順に則った、透明性の高い対応を心がけることが、何よりも重要となります。