祖父から譲り受けた古い金庫、あるいは会社の事務所で長年使っている業務用金庫。ある日突然、その重い扉が開かなくなった時、多くの人はパニックに陥り、「すぐに業者を呼ばなければ」と考えがちです。しかし、専門業者に依頼すれば、当然ながら数万円単位の費用が発生します。その電話をかける前に、いくつかご自身で確認すべきポイントがあります。もしかしたら、その一手間が、不要な出費を防ぐことになるかもしれません。まず、ダイヤル式の金庫の場合、最も多いのが「操作手順の誤り」です。ダイヤル錠は、ただ暗証番号を合わせるだけでは開きません。「右に4回以上回して最初の番号へ」「左に3回、2番目の番号を通過させて合わせる」といった、メーカーや機種ごとに定められた複雑な手順があります。この手順を一つでも間違えたり、数字を少しでも通り過ぎたりすると、最初からやり直す必要があります。もう一度、取扱説明書を読み返すか、正しい操作手順をインターネットで調べて、落ち着いて試してみてください。次に、テンキー式の電子金庫の場合は、「電池切れ」が非常に多い原因です。正しい暗証番号を押しても、電子音が鳴らなかったり、ランプが点灯しなかったりする場合は、まず電池切れを疑いましょう。多くのテンキー式金庫には、非常用の鍵穴や、外部からバッテリーを接続するための端子が、操作パネルのカバーの下などに隠されています。まずは、そうした緊急用の開錠装置がないか、隈なく確認してみてください。また、鍵とダイヤル(またはテンキー)の両方で施錠するタイプの金庫の場合、どちらか一方を開けただけで開かないと思い込んでいるケースもあります。両方の施錠が、確実に解除されているかを確認しましょう。さらに、長年使っている金庫の場合、扉の建付けが歪み、デッドボルト(かんぬき)に圧力がかかって、鍵が回りにくくなっていることもあります。扉を強く押したり、逆に少し引いたりしながら、同時に鍵やハンドルを操作してみると、スムーズに動くことがあります。これらの基本的な確認作業を全て行っても、なお開かない場合。その時こそが、専門業者の出番です。自力での無理なこじ開けは、金庫と中身を傷つけるだけです。プロに任せるべき時だと、冷静に判断しましょう。