今回は、数多くの住宅の防犯対策を手がけてきたベテラン鍵師の方に、一軒家の鍵交換でディンプルキーを選ぶ際に、一般の方が見落としがちな、プロならではの選び方の極意について伺いました。「お客様から『どのディンプルキーが一番良いですか?』と聞かれることが多いですが、実は、単純な性能比較だけでは測れない、重要なポイントがいくつかあるんです」と、彼は語り始めます。「まず、大前提として、必ず『CPマーク』が付いている製品を選ぶこと。これは、防犯性能の客観的な証明であり、我々プロにとっては最低限の基準です。このマークがない製品は、どんなに安くても選択肢に入れるべきではありません」。その上で、プロが注目するのは「メーカーごとの思想と特徴」だと言います。「例えば、国内最大手のMIWA(美和ロック)は、やはり製品ラインナップが豊富で、どんなドアにも対応できる安定感があります。一方、GOAL(ゴール)は、非常に精密で頑丈な作りが特徴で、プロからの信頼も厚い。他にも、WEST(ウエスト)やKABA(カバ)など、それぞれに得意な技術や設計思想があります。重要なのは、一つのメーカーに固執せず、そのドアの特性や、お客様の家族構成(高齢者がいるか、など)に合わせて、最も操作性が良く、かつ防犯性のバランスが取れた製品を提案できるか。それが我々の腕の見せ所ですね」。さらに、彼が強調するのが「鍵の登録システム」の重要性です。「高性能なディンプルキーは、その辺の合鍵屋では簡単に複製できないようになっています。購入時に、シリアルナンバーが記載されたセキュリティカードが付属し、メーカーに直接注文しなければ合鍵が作れない『登録制』になっているのです。これにより、知らない間に合鍵を作られるというリスクを防げます。この登録システムの有無と、その管理の厳格さは、鍵の安全性を左右する非常に重要な要素。交換を依頼する際には、業者にその点も詳しく説明してもらうべきです。もし、その説明が曖昧な業者は、あまり信頼できないかもしれません」。最後に、彼はこう締めくくりました。「最高の鍵を選んでも、取り付けが杜撰では意味がありません。鍵の性能を100%引き出すのは、最終的には我々の取り付け技術です。だからこそ、信頼できる業者に、あなたの家の安全を託してほしいのです」。
鍵のプロが教えるディンプルキー選びの極意